なぜ日本人は「現金」で支払うのか? 世界4億ユーザーのPayPalトップに聞く、外から見た日本の決済・投資カルチャー
2022年 7月15日

PayPal

Business Insider Japanより転載

トラノテック代表取締役社長のジャスティン・バロック氏(写真左)とペイパル日本事業統括責任者のピーター・ケネバン氏(写真右)。

2021年9月、後払い決済サービスのスタートアップ、Paidy(ペイディ)を3000億で買収したことでも大きな話題を集めた、デジタル決済の世界的大手PayPal (ペイパル)。2022年5月には少額からの投資が可能な資産運用サービス「トラノコ」と連携し、投資分野にもサービスを広げた。

日本での積極的な展開の狙いは何なのか。ペイパルの日本事業統括責任者 ピーター・ケネバン氏とトラノコを運営するTORANOTEC(トラノテック)代表取締役社長 ジャスティン・バロック氏が明かした答えは、ちょっと意外なものだった。

資産運用サービス「トラノコ」がペイパルを選んだ理由

ピーター・ケネバン/ペイパル 日本事業統括責任者。マッキンゼー・アンド・カンパニーにて25年以上の経験を持ち、東京オフィスのシニアパートナーを務める。2021年4月から現職。ハーバード大学法科大学院で法学博士号、カリフォルニア大学バークレー校でアジア研究学・政治科学の修士号、スタンフォード大学で経済学・日本語の学士号を取得し、日本を始めとしたアジアの文化に精通している。

──世界で4億2900万、日本でも840万のアクティブユーザーを持つデジタル決済のトップブランド、ペイパルが「トラノコ」とサービス連携をスタートしました。その目的を教えてください。

ピーター・ケネバン氏[ペイパル日本事業統括責任者] トラノコのユーザーに向けて、ペイパルの堅牢なデジタル決済サービスを提供することです。これによりトラノコユーザーの利便性が高まるのはもちろん、ペイパルのユーザーにとっても投資への道が開けることになります。

ジャスティン・バロック氏[トラノテック代表取締役社長] そのとおりです。トラノコではこれまで銀行口座や特定サービスでの決済が可能でしたが、ペイパルでの入出金もできるようになりました。デジタルやモバイルが当たり前の世代にとって、投資がさらに身近になることを期待しています。

ケネバン氏:ペイパルは、海外では送金やクーポン、暗号資産など幅広い金融サービスを提供しています。日本では越境ECを中心としたオンライン決済が専門だと見なされてきましたが、2021年にPaidyを買収してBNPL(Buy Now Pay Later:後払い決済)サービスを提供するなど、国内のサービス拡充にも努めています。そうした取り組みの一環としてトラノコと連携し、投資分野にも足場を広げた形です。

──今回の連携によって目指すことは何でしょうか。

ケネバン氏:このトラノテックとの連携には、ペイパルが日本において目指している目標がよく現れています。それは、まず日本におけるファイナンス面でのリテラシーとアクセスの向上を図ることであり、さらに高いレベルで言えばファイナンシャル・ウェルネスや金融の民主化の促進です。

「ファイナンシャル・ウェルネス」とは、長期にわたっておカネのことを心配しなくていい経済環境をつくって保つこと。「金融の民主化」とは優れた金融サービスを誰でも低いコストで利用できることを指しますが、今回の連携もその一助になると考えています。

バロック氏: 投資を始める上での心理的なハードルを下げ、日本独特の投資に対するマインドを変えることで日本の人々に貢献したい。その実現のために、トラノコでは投資を人びとの生活に織り込む「生活密着型」のサービスを展開しています。ペイパルとの親和性も非常に高く、連携によるこれからの展開に期待してください。

日本の金融文化には「パラドックス」がある

ジャスティン・バロック/トラノテック 代表取締役社長。ステート・ストリート・グループで18年にわたり証券、投資顧問、銀行業務を担当。ステート・ストリート・グローバル・マーケッツ証券の代表取締役、ステート・ストリート銀行の在日代表、ならびにステート・ストリート・グループの証券部門のアジア環太平洋地域のトップとして、グローバルでビジネスの展開を主導。2016年8月にトラノテックを設立。

──長く日本で仕事をしてきたお二人は、決済や投資といった金融分野における日本の文化をどう見ていますか。

バロック氏:日本社会にはパラドックスがあります。高度に進んだ経済と個人投資家向け金融サービスの長い歴史があり、FXや暗号資産に積極的に投資する人もいます。一方、貯蓄文化が根強く、まだ投資を一度も行なった経験がない人が大多数です。投資が日常の話題になる海外と違って、日本では投資をすることにためらいがあるように思います。

ケネバン氏:そうした投資においての日本の特性は、決済面での特性と共通しています。日本以外では決済サービスの民主化が進んでいますが、日本は金融文化がとても洗練されている国なのに決済ではいまだにキャッシュが大部分を占めていますよね。

バロック氏:「投資は分からないから不安」と考えている人も多いのではないでしょうか。一般的に投資の世界との馴染みが薄いので、金融資産を銀行に置いたままにしている人が多い。投資信託協会の調査結果でも20代から70代までのすべての世代で、投資を経験したことがないという回答が一番多いのはそのためです。

しかし、超低金利が続いているだけでなくインフレも進み始めている今日、資産形成に向けた投資は、もはや「やったらいいこと」ではなく「やらなくてはいけないこと」です。そこで、投資を始める上での敷居を可能な限り低くできれば……と考えて、トラノコでは少額から投資ができるように設計しました。

無理のない範囲で、長期にわたってコツコツ市場に参加し続けることこそが重要で、トラノコはそれを簡単に楽しく行えるサービスを提供しています。

「父親が、毎週1ドルを投資してくれた」

Shutterstock / Marian Weyo

──そのような日本独自の金融文化は、ペイパルやトラノテックの事業展開にどのように関わってくるのでしょう。

ケネバン氏:ペイパルの事業に関する分野で言えば、日本の決済文化にはもう一つ、キャッシュ・オン・デリバリー(代金引換)が好まれる特徴があります。eコマースを利用しても、支払いはコンビニや宅配便事業者に対して商品と引換で行なう、現物を確認した上で支払う文化です。

ペイパルのファミリーとなったPaidyが展開するのはBNPLサービスですが、オンライン決済でありながら現金での後払いができるので、代金引換の代わりに利用できる。さらに当月分の利用金額はまとめて1回の支払い。これは国内において大きなアドバンテージだと考えています。

バロック氏:先ほどの話と重なりますが、投資を始める上での心理的なハードルが高い文化なので、トラノテックにとって鍵になるのは、トラノコを始めやすく続けやすいサービスとして整備することです。警戒心なく始められる環境をつくることができれば、多くの人を投資の世界に迎え入れて文化を変えられる。

現にトラノコの利用者の75%は20〜40代で、この世代では新しい投資文化が育ってきていると感じています。金融リテラシーの普及とテクノロジーによるアクセス性の向上を引き続き行い、投資へのバリアをなくすことに注力していきます。

ケネバン氏:私が子供のころ、父親は毎週1ドルずつを投資信託に入れてくれていて、後になってみると大きな金額に育っていました。そういう文化が日本でも広がるといいと思います。「投資は投機とは違う」ことを、日本の人たちに知らせたい。短期での値上がりを狙って大きな額を投じる投機とは違い、投資とは少しずつ何度も繰り返して、それを長期的に続けていくものです。

これは将来の健全な資産形成を確保するための言わば「サブスクリプションシステム」と呼べるかもしれません。トラノテックのビジネスモデルは、日本における投資の民主化に貢献できると信じていますので、そこへのアクセスにペイパルを活用してもらえることは非常に嬉しいですね。

日本からフィンテック分野のイノベーションを

──中小規模事業者(SMB)も含めた日本のビジネスにとって、ペイパルと連携することのメリットとは何でしょう。

ケネバン氏:たくさんあります(笑)。まずは越境Eコマース。この分野においてペイパルは世界最大の決済ネットワークを持ち、ユーザー数は4億2900万人に達しています。

日本ではSMBにも素晴らしい製品やコンテンツがあり、海外向けのECは今後ますます拡大するでしょう。ペイパルでの決済で、世界中のお客様へアクセスが広がることになる。私自身、海外の友人から日本の備前焼をオンラインで購入するのにペイパルを使いたいとリクエストを受けたこともあります。

また、ペイパルは今後さらに日本に適した新たなサービスを導入する取り組みを進めています。国内ではデジタル決済はまだ戦国時代のような状況にありますが、今後、生き残るサービスが絞られていく流れの中で、多様なサービスがあることはペイパルにとって大きな競争力になる。利用者にとって魅力的なサービスを追求していきます。

日本はエレクトロニクスや自動車などの分野でテクノロジーをリードしてきましたが、今、フィンテックにおいても有望なスタートアップが続々と登場しています。ペイパルでもこの先、日本でのビジネスがグローバルなサービスにイノベーションをもたらす起点になっていくでしょう。そういう意味でも日本への期待は非常に大きいんです。

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