ストーリーズ

「PayPal テクノロジーチャレンジ」の参加団体が得た社会変革の可能性とは?

ペイパルが地域社会に貢献することを目的に、世界中でNPO団体に助成を行っている「ペイパル コミュニティ・インパクト・プログラム」。そのひとつとして実施された「PayPal テクノロジーチャレンジ」が行われた(このプログラムに先立って行われたオープンセミナーについてはこちら)。

「PayPalテクノロジーチャレンジ」は、社会課題とデジタル活用のアイデアプランを具体化し、事業推進をエンパワーメントすることを目的とするもの。今回は、このプログラムのパートナーである長期実践型インターンシップの事業化や若手社会起業家への創業支援を行うNPO法人ETIC.を通じて、6団体(以下、参照)が参加した。ペイパルの社員もプロボノとして加わり、各団体が抱える課題をデジタルで解決し、さらなる社会変革の可能性を探っていった。

 

「PayPal テクノロジーチャレンジ」参加団体

 

 

デジタルの可能性をどう活かせるかを期待して参加

これら6団体は、いずれもその支援領域では注目される団体ばかり。とはいえ、活動が広がる中で、様々な課題やジレンマも増えている。

例えば、親子をとりまく社会課題の解決をテーマに活動する認定NPO法人フローレンスが解決したい課題は、「医療的ケア児を持つ家族が行う日々の支援団体への連絡業務の軽減」。こうした家族は、医療機関や行政、支援団体など、複数のサポートを利用しながら生活しているが、その連絡方法は各所ごとにメールか電話をすることが多く、これらの連絡業務は日々のことだけに家族にはかなりの負担がのしかかるケースもある。そこでフローレンスでは、「家族の支援団体マネジメント」をデジタルで負担軽減できないかと考えている。

また、「社会課題が解決され続ける世界」を目指すNPO法人クロスフィールズは、新たなミッションの一つである「社会課題を自分事化する人を増やす」ことをデジタルの     活用などを通じて推進していきたいという。このように、各団体は、自分達の可能性をデジタルで広げ、デジタルを通じた社会改革を模索するためにこのプログラムに参加した。

 

3ヵ月間のプログラムを通じて学びを得る

プログラムは、毎月1回の全体ミーティングを行い、Shared Digital Center代表取締役で立命館大学客員研究員でもある金 辰泰(きむ・じんて)さんが講師兼モデレーターとなって進められた。

金さんは、社会課題をデジタルで結びつけることで、インパクトの大きい成果が生み出せると考える。その具体例の一つが、飽食気味の先進国の大人に健康的な食事を提供し、そこで生まれた利益をベースに、途上国の子どもに給食を提供する「TABLE FOR TWO」の取り組み。誰かを有料で救うことで、他の誰かを無料で救うという、このプラットフォーム型のモデルは、新たな経済合理性に基づく持続可能性をさらに広げる。

社会課題は複雑に絡まっている。その課題同士の繋がりである「イシューリンケージ」が大事な着眼点になる。社会課題を結びつけて一挙に解決する新たな持続可能性を紡ぎだすために、いかにデジタルプラットフォームを活用できるか。そのためには、異なる課題に紐づくそれぞれの受益者を特定し、いかに片方が裨益されるほどもう片方も裨益するかを見極めることが重要となる。デジタルに相互作用を繋げられれば、持続可能性に拡張性も担保された”Sustanable and Scallable Impact”が生まれる。当日はそれらを検討するために改良されたビジネスモデルキャンバスといったフレームワークを活用し検討が行われた。

質疑応答では、誰もが納得する課題の見つけ方や定義をどのように作るのか?イシューリンケージからどのようにアジェンダを作るべきか?など、具体的なアクションについての質問が飛び交い、熱い議論が交わされた。金さんは、助けたい受益者のどのような課題を解きたいか、その課題はどのような構造により維持されていて誰と繋がりうるか、繋げた上での解決方法がワクワクするか、といった3点が重要と補足した。また、全ての支援にはトレードオフと呼ばれる副作用も発生するため、それをいかにプラットフォームで他の受益者を繋ぎ補完的に解決できるかに着目することも有効であると解説した。

「PayPal テクノロジーチャレンジ」では、この「ビジネスモデルキャンバス」に基づき、それぞれの団体とペイパル社員が一緒になって、各事業を見直し、課題解決や事業成長への考えを深めていく作業が繰り返された。

 

「Social Hack Day」との連携

また、「PayPalテクノロジーチャレンジ」では、Code for Japanの「Social Hack Day」も紹介された。Code for Japanは、「ともに考え、ともに作る」を掲げ、市民で解決できる社会課題や、市民と行政が連携して解決できる社会の促進に取り組んでいる。最近では、東京都の新型コロナ対策サイトを1週間で作り上げてしまったことなどで知名度が上がり、その活動の認知や評価が広がっている。それらのCivi TechやGov Techを促進するための手法が「Social Hack Day」で、「何かやりたい人、やっている人がプロジェクトを持ち込み、仲間を募り、手を動かしながらサービスを作り上げる」というもの。

今回参加した6団体には、この3ヵ月で練ったプランを、「Social Hack Day」で発表することが提案された。目的としては、デジタルの開発は予算も時間もかかるため、エンジニアにきちんと解決したい課題を伝え、協業する経験を積むためである。加えて、日本に社会課題の解決に協力してくれるホワイトハッカーの集団が存在することを認識してもらい、ソーシャルリーダーとホワイトハッカーのネットワークを構築することも狙いとしてあった。

 

「PayPalテクノロジーチャレンジ」の成果は?(1)

冒頭で紹介したフローレンスは、親子の笑顔をさまたげる社会課題を解決することを掲げて活動する認定NPO法人。今回は、医療技術が高度化されたことにより 増加している「医療的ケア児」を取り上げた。医療的ケア児とは、NICUなどの長期入院後も引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアが日常的に必要な障害児のこと。全国に約2万人はいると言われ、ここ15年で2倍に増えている。

こうした子どもを抱える家族は、24時間ケアに追われ就労や社会参加が難しくなるなど先の見えない不安を抱えながら暮らすことを強いられる。そうした家族を支援するグループウェアの開発を構想した。これにより、日々の医療機関や行政、支援団体などへの連絡負担や、各種情報の入手の手間の軽減を目指す。

このグループウェアの運用は、障害者や介護者、社会参加がしにくい人(例:海外駐在員の家族など)が行うことで、医療的ケア児の介護負担を家族だけに閉じないことを大事にしていけると考えた。後日参加した「Social Hack Day」でも、このアイデアが非常に注目され、「PayPalテクノロジーチャレンジ」で心強いアドバイスを得ることができたと語っている。

PayPalテクノロジーチャレンジ

また、「社会課題を自分事化する人を増やす」「課題の現場に資源を送り、ともに解決策をつくる」をミッションに掲げて活動するクロスフィールズは、大学外でチャレンジができていない大学生が、社会課題との接点が少ないこと、社会課題に取り組む団体の人手不足という2つの課題を結びつけ、自分事化する人を増やす方法について考えた。

検証を進める中で、ゲーム要素、クイズ形式、ビジネスコンテスト形式などを採用し、夢中になり、シェアをしたくなる方法を、参加する大学生と一緒に考えていきたい、という結論に行き着いた。

クロスフィールズは、「誰に対して自分事化するかを見定められた」ことが最大の収穫だったと語っている。どんなペルソナに、どんな体験を届けるかを議論する中で、大学外でチャンレンジができていない大学生という新たなターゲットが見えたことで、「Social Hack Day」でも説明がしやすくなったと総括している。

PayPalテクノロジーチャレンジ

 

参加したペイパル社員にも新たな気づきが

不登校学生への学習支援塾を行っている学習支援塾ビーンズのディカッションに参加した田坪成浩(ペイパル東京支店 エンタープライズセールス ビジネスオペレーションズ所属)は、「当事者では見えてこない、新たな課題の発掘ができたことは、新鮮な経験でした」と語る。

もともと、ビーンズの参加目的は、運営側の人手不足により、新しいスタッフや学生スタッフへの業務教育や横連携が行き届かない点をデジタルで解決したいと考えて参加したが、議論を進めていく中で、その課題がガラリと変わった。

ビーンズは、不登校・無気力などに悩む中高生に対して、Zoomを使ったオンラインの学習支援を行っている。ただ、Zoomの授業では、たとえグループ授業だとしても、どうしても一方通行のコミュニケーション(講師が一方的に授業をするだけ)となりがちで、また同じ悩みを持つ生徒同士のつながりが持てていなかった。

そこで、現在Zoomで行っている授業を、まるで現実の空間で話しているような感覚でいられるバーチャル空間「oVice」に移し、オンライン上に居心地の良い生徒の居場所を作りながら、グループ授業を活性化することを検討した。oViceによって、講師一人が複数の生徒に授業を行うことができ、受け入れる生徒のキャパシティを増やせるという運営側の利点に加えて、生徒のつながり機会を作ることができ、また家族も、よりリーズナブルな料金のグループ授業を選択することができるようになる。

一方、議論を重ねるにつれて、ツールがZoomからoViceに変わることで、生徒がなじめなくなるのではないか?という懸念も浮き彫りにされたが、これについては、通塾歴が長い生徒を対象としたイベントを行い、何度か改善を繰り返しながら、他の生徒へと広げる計画を立てた。

何よりも、今回の参加をきっかけに、「学生スタッフによる塾内改革組織」を作ろうという新たな目標も立ち上がるなど、大きな収穫を得たという。

PayPalテクノロジーチャレンジ

「このプログラムに参加してみて、何よりも社会の広がりや奥行きを、普段とは違う感覚で見ることに大きな刺激と楽しさを覚えました。私が今後、ペイパルというネットワークを通じて社会に意義のある価値を、どのように提供できるかを改めて考える良い機会になりました。」(田坪成浩)

参加した6団体は、「PayPalテクノロジーチャレンジ」によって、自分達だけでなく、ペイパル社員という新しい知見や視点、つながりを得ることで、今後の活動の糧とすることができた、という。

ペイパルの瓶子昌泰(ペイパル東京支店 シニア・ディレクター兼副代表)も「皆さんとのディスカッションを通じて、皆さんの社会変革を応援させていただくとともに、ペイパル自体のビジネスに直接つなげられる良い刺激をいただいています。また、一個人としても社会人としての責任ということを見つめ直す素晴らしい機会になりました。ぜひ、プロボノ参加メンバーとともに、素晴らしいプランを一緒に作りあげていきましょう」と抱負を述べた。

ペイパルは、今後も日本のソーシャルセクターの活動を応援し、社会変革の可能性について模索していく。

 

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「PayPal テクノロジーチャレンジ」でもたらされた価値

 

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